ブー、フー、ウー、という兄弟三匹の子豚がいた。母親に、内の家は貧しいから、みんなそろそろ、自分で家を建てて暮らしなさい、と言われ、三匹は、それぞれ家を造ることになった。
一番上がブー、ぶうぶうぶうのブツブツ屋、怒ってばかりで文句ばっかりのせっかちのめんどくさがり屋だ。農家の人から藁を貰って、一番簡単な藁の家を建てた。
二番目がフー、ふうふうふうのくたびれ屋、寝るより楽はなかりけりの性分で、働くことが嫌でたまらないへこたれ屋だ。それでも、木こりのおじさんから木を貰って、木の家を建てた。
三番目がウー、ううううううの頑張り屋、文句も言わず、少々のことではへこたれない真面目屋さんだ。橋を造っている人からレンガを貰って、こつこつと、レンガの家を建てた。
オオカミがやってきて、藁の家のブーに、寒いから入れておくれと言うが、ブーは僕を食べる気だと知って、駄目だよと追い返す。オオカミは、大きな息をして、ふうーと藁の家を吹き飛ばしてしまった。ブーは急いで逃げて、フーの家に隠れた。
オオカミは、フーの木の家に来て、寒いから入れておくれと言うが、フーは、僕たちを食べる気だと思って、駄目だよと言って、入れてやらなかった。オオカミは、フーの家に火をつけて燃やそうとした。ブーとフーは、急いで逃げて、ウーの家に隠れた。
オオカミは、ウーのレンガの家に来て、寒いから入れておくれと言うが、ウーは入れてやらなかった。オオカミは、ウーの家を吹き飛ばそうとしたができなかった。火をつけて燃やそうとしたができなかった。オオカミは、あきらめて、森に帰っていった。
三十年経った。ブーは何度も何度も、大風や洪水で藁の家を、吹き飛ばされたり、流されたりしながら、その度、藁の家を、また建てて、住んでいた。何しろ、藁の家は、とてもたやすく建てられるのだから。
ブーは、山火事の延焼に合うこともなく、それでも、少しずつ傷んでくる木の家を直し直ししながら住んでいた。
ウーは、昔とそれほど変わらない外見のままのレンガの家で、ゆったりと過ごしていた。
そこに大地震がやってきた。ブーは、ちょうど、大海原を航海する夢を見ていたのだが、大きな台風に揺らされて目が覚めた。藁の家は、跡形もなく、ブーは一人で大地に寝そべっていた。
フーは、大きな揺れで目を覚まし、障子を蹴破って外に飛び出したが、倒れてきた柱で大きなけがをした。
ウーは、直ぐに気が付き外に出ようとしたが、扉が開かず、レンガが少しずつ崩れ、下敷きになってしまったが、一命だけは取り留めた。
その後、三匹は、三匹いっしょに、大きな藁の家を建て、三匹いっしょに住んでいる。オオカミも、森から出てきて、いっしょに住んでいる。ウーは、レンガの家を作るのをやめた。レンガの家は、頑丈でいいのだが、壊れてくるととても危ない。藁の家なら、何が起こったって、藁の家が、失くなるだけだから、どうってことはない。何しろ、藁の家が失くなったって、直ぐに作り直すことができるのだから。大地が、割れない限り、生きていけると、仲良く暮らしたとさ。
立派なものを持っていると、失くすとき、とっても、損した気分になるが、大したものを持っていなければ、失くしたって大したことはないのだ。
大三角 三色三つ星 事もなし
2013年 1月5日 崎谷英文
|